<第8話 孔雀の呪法を教えてもらう> 役行者物語 |
ある時、ひょっこりと寺に来た汚い小角をひと目見てこの子は「ただものではない」と思います。
僧正はもともと、昔、高麗と言った頃の朝鮮の人で、後に井上法師とも呼ばれました。
僧正は小角がいつも葛木の山を歩いている事を聞いて大変感心します。人間にとって山で暮らすことは自然から無限の恵みを受けるものと信じていたからです。
もし恐ろしい事にであったら自分の身を守るためにこの呪文を唱えなさいと「孔雀の呪法」を教えてやります。
人々は孔雀を畏れ敬っていました。ヒンズー教の影響で、孔雀は女性神格化されて孔雀明王、あるいは仏毋孔雀明王という仏やお経ができました。古代からインドでは「孔雀の呪法」というのは恐ろしい毒蛇などからまぬがれ身を守るためのおまじないであったのです。<目で見る仏像 東京美術より引用>
小角は孔雀の呪法をとなえながら葛城の山々を歩いたり、滝に打たれたりしていました。ある夜、二上山の麓で野宿していると夢の中に生駒明神があらわれて
「役小角よ。ここにおまえに授けたいお経がある。天下は広いがお前よりほかに伝える者はいない。お前は生駒山へ登れ。」と告げられました。
翌日、小角は大和川を渡って生駒山に登りました。小角が生駒山の山頂から四方を見渡していると、はるか北西のほうにかすんで見える山のほうから不思議な光が放たれているのが見えます。小角は引き寄せられるようにその光の方へ向かって行きます。
その山は箕面の山でした。
<参考引用 著者 銭谷武平 「役行者ものがたり」より>