<第12話 小角 謎の熊野へ 2> 役行者物語 |
すると女が道の辻で子供が生まれそうになって苦しんでいます。
そばには二人の子供が心配そうに見守っています。
「おまえたちの母か。おまえたちは何処から来たのか」と問いかけると
「われらはいつもこの辺りで遊んでいる。おまえも迷わず穢れをはらって去れ」といいます。
小角は祈りをして立ち去ろうとすると童子は空に上っていきました。神通力を持って仏法を修行する人たちを守っている童子で、産婦を守っていたのです。
小角は湯浅を流れる川の岸に着きました。
あたりは牛や馬の死骸がころがっています。ふと見ると白髪の老女がその肉を食べていたので早く立ち去るように言いました。
熊野にたどり着くまでには幾多の邪気が現れ、そのたびに川の水で身を清め孔雀の呪文を唱え続けました。
熊野へお参りする人はまず川や谷の真水で三世の苦を洗い清めます。
この禊によって清らかな心と身体になれるのです。
さて、小角がお参りを済ませてから発心門まで戻ってくると一人の
仙人のような老人にであいました。
「私は百済の国の美耶山に住んでいる香蔵仙人である。おまえさんは熊野の山の恐ろしい主がいる難所を知っているか。そこは御山から降りてくる人から生気やご利益を奪い取ってしまう難所が三ヶ所もある」といいました。
<熊野市観光公社>
<参考引用 著者 銭谷武平 「役行者ものがたり」より>