<第32回 伊豆の奇変----島での呪術修行①> |
毎日太陽が照りつけ潮風に吹かれる海辺の生活は小角にとってまったく新しい経験だったのです。
珍しい生活も日が経ってくるにつれて慣れてきて、また呪術の修行をしなければいけないと思うようになりました。
小角は空に登る飛行の術を試みました。(とうてい信じられる話ではありませんが)いつも眺めている富士山へ飛んでみようと決めると、まるで羽が生えたようにフワフワと飛べたのでした。
昼間は刑に服し、夜になると鎌倉、箱根、熱海などの上を飛んでいたのでした。小角は富士山のふもとで修行しその事は今も伝えられています。
その頃、伊豆大島では次々と不思議なことが起こって村人たちは気味悪がっています。
大島の雲の中から五重塔がそびえ立っているとか、夜になると三原山からたいまつのような火の行列が天へ昇って行くとか色々な噂が広まって、その現象は小角が飛行の術を使った後にあらわれるのでした。
小角は天気の悪い日には岩屋にこもって流木に仏像を彫ったりして3年の月日が経っていました。
<参考引用 著者 銭谷武平 「役行者ものがたり」 写真 伊豆大島ガイドより>