新西国巡礼 <第9番 飛鳥寺> |
うきことの 消ゆるもけふか 飛鳥寺 末やすかれと 祈るみなれ
この寺は祟峨天皇元年(588)11月に落慶したといいます。
推古天皇の14年(606)金銅の大仏が造られ元興寺の金堂に安置されたのが御本尊の大仏様で重要文化財に指定されています。これがわが国における金銅仏の最初です。
●本尊 飛鳥大仏(釈迦如来)●開基 蘇我馬子
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法話
生かされる命尊し 飛鳥寺住職 山本宝純
私たちはこの世に生をうけ、限られた人生を歩むために、まず、生かされて生きている事に気づき、感謝の念を抱かねばなりません。よく物が豊かになればなるほど心が滅びると言われます。現代の日本では物質が豊富で欲しいと思う物は何でも得られ、それがために人間の欲望は限度を知らないかのごとくです。
また日常生活における価値観も、物の形や色によって判断しがちであり、逆に物や形では見えない尊い価値、いわゆる心の価値を見失っているように思われます。
しかし大事なのは目に見えない価値ではないでしょうか。
地球上の万物すべてがこの目に見えないもの、すなわち自然の恵みという力の支えによって生かされていることに気づき、その恩を知るという心の眼を養わなければなりません。
日常私たちが使っている言葉の中で最も美しいのは「ありがとう」「もったいない」という言葉だと思います。なぜ美しい言葉であるかと言いますと、それはこの言葉を使うその時の人の心情が美しいからです。
しかし、これらの言葉が現代人の生活の中から薄らいでいるのが、何とも心さびしい限りです。
そこで、これらの形に見えない物のありがたさを知るために、欲望に対しては「足るを知る」ことの意味を理解し、また自分が宇宙何万年の中の微々たる時間の今日に生かされていることへの感謝の気持ちを、拝む事によって培いましょう。
みなさま方には出来るだけお寺に参拝され、宗教的な雰囲気の中で仏さまに礼拝しご自分の人生を振返っていただくことをおすすめします。
飛鳥大仏(釈迦如来)
「日本の仏像」三学出版
<参考引用掲載>新西国霊場法話巡礼 朱鷺書房