西国薬師巡礼<第8番 室生寺> |
我が身をば 高野の山に とどむとも 心は室生に 有明の月
室生は大昔は噴火口で、周囲の山々は外輪山だったと伝えられています。室生寺の創建については白鳳9年(680)天武天皇の勅願によって、役の小角が草創し、後に弘法大師が東寺、高野山とともに真言宗三道場の一つとして営まれたと言います。江戸時代中期「女人高野」として有名になりました。高野山が女人禁制であったのに反し、室生寺は女性の入山を認め高野山にかえてこの寺に参る女性の姿は続々と続きました。
奈良県宇陀郡室生村字室生78 ☎07459-3-2003
●本尊 如意輪観世音菩薩●開山 役の小角 弘法大師 隆光
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法話
祈りの道 室生寺住職 網代智等
おおくの人が神仏を祈りますが、お祈りは感謝感恩の心のあらわれ、動作、生活であります。人は過去、現在、未来の無限の因縁生起の中に生き、そして滅びて行きます。生きるために人は、他の動物、植物を犠牲にしなければならない宿業にあります。他を犠牲にし、そのお蔭で生きられるものであればそれらの菩提を弔う感謝の心がなければなりません。人のみの便利さを図り、人間生活の向上のみひたすらに追求して、他のものへの思いやりを忘れる事は誤りであります。
お釈迦様の教えの中には十善戒の規律があり、その第1番目に定められているのが不刹生戒です。これは人間の謙虚な生活、他に対する思いやりを望まれての事であります。その報恩感謝の心を私たちの生活の中に形としてあらわした行事が仏事、法会です。一日を正しい生活で過ごせますように、毎朝ご仏前で礼拝し、お茶、お香、燈明、お花を献じておつとめする事をおすすめします。
日を定めて、お寺のご本尊さまを礼拝する事もまことに意義ある事です。
報恩感謝の心を忘れて私利私欲の満足ばかりを追求していると、不満、羨み、嫉妬の心が生じ、まことの楽しみを見いだす事は出来ません。供養し、孝養を尽くし、思いやりを施し、自分を大切にする事を知るべきです。お釈迦様は正しい生活の実践から正しい精神統一の道を示されました。その道は最高至上の目的に達するすがすがしい道であり、祈りの道なのです。
<参考引用掲載> 西国四十九薬師巡礼 朱鷺書房