西国薬師巡礼<第33番 高富山 石薬師寺> |
名も高き 誓いも重き 石薬師 瑠璃の光は あらたなりけり
それを契機として男女の厄除の霊験がますますあらたかになり、参詣する人が日増しに増え近くは言うにおよばず遠方に至るまで評判になり、遂に時の帝、嵯峨天皇の耳に達しました。天皇は直ちにこの寺を勅願道場とされ堂坊も整い塔頭寺院も十二カ院、寺領も三町に達し繁栄を極めました。
三重県鈴鹿市石薬師町1 ☎0593-74-0394
●本尊 薬師如来●開山 泰澄 弘法大師
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法話
心にみほとけを 石薬師寺住職 福田寛随
「仏法遥かにあらず、乃ち心中にして近し」という弘法大師のお言葉がありますが、仏を信仰するという事は、仏と同じ誓願を起こし、仏と同じ心になる事です。仏さまは必ず衆生を救うための誓願をお立てになっています。お薬師さまは、十二の上願をたてて、我々をお助け下さっているのであります。特に第七の誓いは「所病悉除の願い」で「南無薬師諸病悉除の願いなれば頼む我々を助けたまえや」と御詠歌にあり、また、弘法大師は「病人に向かって方経を被き談ずるとも病いを療するに由無けん必ずや須らく病いに当たって薬を合わせ、方に依て服食して、乃ち、病患を削除し性命を保持する事を得」(性霊集)すなわち、病人に対して、ただ処方箋を開いて、病原や薬剤を説いても、病は癒らない、すみやかに診察して薬を飲ませる事が肝要であり仏の教えもお経を聞いて議論するよりも、人々の苦悩に対して教えを与え、心の病いを取り除かなければならないと言っているのであります。
信仰によって自分だけが幸福になりたいと幸福を独占しようとするのは、仏の道にはずれている考えです。薬師さまを信仰して自分を幸福にして頂くのは、幸福になって、世のため、他人のために尽くそうとする誓願で無くてはなりません。つまり、我々一人ひとりが即身成仏をして欲を離れ、施しの徳を積み健康で、内にあっては善い家庭、外にあっては他の人のため、善い社会人として平和に尽くし自分が仏になって世を救おうと志すことで、人々の心の糧とならなければ何の役にも立たないのであります。
<参考引用掲載> 西国四十九薬師巡礼 朱鷺書房