善悪の判断の基準を誤るな |
凡夫は善悪に盲いて、因果あることを信ぜず。
ただし眼前の利を見る。何ぞ地獄の火を知らん。
秘蔵宝鑰(ほうやく)巻 上
自分さえよかったらよいという生き方の人たちは、人間としてなすべき善いことと、してはならない悪いことの区別がつかず、善悪の判断の基準が狂っていて滅茶苦茶である。そして自分のした行為の果報が将来に報ってくる・・・という因果の道理などは頭から信じようともしない。したがって目の前の近欲(ちかよく)の利益と官能の楽しみのみを追い求めて、来世は地獄の火に焼かれるような苦しみを受けるとも知らずに平気で暮らしているのである・・・と。
お釈迦様は、
「此有れば、彼有り。此生ずれば、彼生ず。
此無ければ、彼無く、此滅すれば、彼滅す。」(自説経)
という「因果の法則」を説かれた。これがこの世の現象世界変化の法則の内容である。
「こういうことがあると、ああいうことがでてくる。こういうことをしなかったらああいう結果は生じないのだ」という条件によって正起してくる・・・因縁の法則である。
この世はまさに「天網恢々、疎にして失わず」(老子)で有ることを知っておかなければならない。
引用掲載 弘法大師空海百話 佐伯泉澄 著者