(洛中) 星見地蔵〜歯塚地蔵〜歯形地蔵 ? |
満願の夜に限って明星が見えないという事は、まだ祈りが足りないのだと一心にお地蔵さんに念じていると、どこからあらわれたのか、一人の僧があらわれて、天を一突き指さすと、またどこかに消えてしまいました。
阿刀は不思議に思いながら僧の指さした一角を見ると、いままで曇っていた空がいつの間にか晴れて、明星が一つ輝いていた。
「ああ、ありがたや。きっと願いが通じたにちがいない」
案の定、阿刀はその日から身ごもり、やがて、玉のような男の子を生みました。宝亀五年(774)のことです。明星から授かったというので“貴物(とおときもの)”と名づけました。後の弘法大師です。
阿刀は、その後、自分に明星を指し示してくれた僧の姿を一体の地蔵尊に彫り上げて、守り本尊としました。この像はもと阿波の国にありましたが、寛文年間、真言の僧玄恵律師が、西雲寺に移し安置したといわれています。
参考引用掲載 京のお地蔵さん 竹村俊則
写真 ro-shin