<第十一仏 阿閦如来 あしゅくにょらい> |
三回忌には十仏の阿弥陀如来さまが極楽浄土へと迎えてくれますが、密教では極楽浄土が最終点ではなく、そのあとにさらに素晴らしい生命として復活するととらえ、それをつかさどるのが十一仏の阿閦如来、十二仏の大日如来、十三仏の虚空蔵菩薩です。
阿閦如来さまは珍しい仏さまで、めったに拝めることができません。
写真 宇治市地蔵院の阿閦如来さま(白鳳時代)
三学出版『日本の仏像』より掲載
阿閦如来にまつわる数少ない伝説を紹介します。奈良時代聖武天皇の妃・光明皇后は、自らお建てになった法華滅罪寺に浴室を設け、家のないものや病人など千人の民の汚れた身体を自ら洗い流そうという悲願を立てられました。
その千人目に体中から黄色い血膿を噴出している者が現れ、「この膿汁を皇后の口で吸い取ってくれ」といいます。皇后は嫌悪の情に身を震わせ、この者を追い出そうと思ったが、九百九十九人まで達した自分の悲願をこれで崩してはいけないと思い直し、注文どおり自分の口で膿を吸出しきれいに洗い清めて上げました。
すると金色輝く阿閦如来の姿に変わって「光明子よ、そなたは阿閦如来の血を吸った。そなたの身体は阿閦如来と同じになった」と言い残して東の空のかなたへ消え去りました。
そこで光明皇后は目の辺りに拝んだ阿閦如来の姿を仏師に命じて彫刻させ阿閦寺を建立して如来像を安置しました。
こういうお話です。どんなものに対しても憎しみや嫌悪感を一切抱かないという阿閦如来の教えです。
参考資料(おおさか十三佛巡礼)