新西国巡礼 <第18番 延暦寺> |
千代かけて 世をば救ひの 鐘の音を 送り絶えせぬ 比叡の山風
などの名で親しまれ、慈円の「世の中に山てふ山は多かれど山とは比叡のみ山をぞいふ」という歌によって広く世に知られるようになりました。
延暦寺は、伝教大師最澄上人が延暦四年(785)山上に一乗止観院を建て自ら刻まれた薬師如来のご宝前に三つの灯明をかかげ「あきらけく後の仏のみ代までも光り伝へよ法のともし火」と祈られた時に始まったといわれています。
滋賀県大津市坂本本町4-220 ☎0776-78-0001
●本尊 聖観世音菩薩●開基 伝教大師
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法話
一隅を照らすということ 第253世天台座主 山田恵諦
伝教大師が書かれた「天台法華宗年分学生式」の中に、有名な次の一節があります。
「国宝とは何物ぞ、宝とは道心なり。道心有るの人を名づけて国宝と為す。故に故人の言わく経寸十枚是れ国宝に非ず、一隅を照らす此れ則ち国宝なりと」
「一隅を照らす人間になりなさい」というのは、伝教大師の一番大切な教えの一つです。
一隅を照らすということはどういうことかといえば、自分の全力を仕事の上に発揮しなさいということ。自分の持てる力のすべてを、任務の上に出しなさいということです。
どんな小さな目につかない片隅でも、その場所をしっかり守って全力を尽くす人間が偉いのです。
歌舞伎の舞台でも、団十郎や菊五郎だけでは成り立ちません。
地方や裏方の沢山の人が、それぞれの持ち場をしっかり守ってこそ舞台が成立するのです。現実の社会も同じこと。
総理大臣だけで国が成り立って行くわけではありません。企業における上司と部下、家庭における親子の関係、すべてにおいて一隅を照らすことを自分の使命と考えることが人間としての基本なのです。
叡山の根本中堂には「不滅の法燈を守り」と書いてあります。
法燈というのはみんなが心の中に光を持てということ。わが身を蝋燭にして光をともせば、その光がみんなに反射し影響し合います。
だから我々みんなが、わが身を燃やすように、日々是れ努力と精進を重ねて行けば、必ずよい世の中になれると説いておられるのです。
<参考引用掲載>新西国霊場法話巡礼 朱鷺書房