新西国巡礼 <第22番 天上寺> |
ちぬの海 わたるもゝ船 あけくれに あふぐや摩耶の 法の燈
お堂に行くまでに天竺堂という小さなお堂があり、インドから贈られた大理石の仏毋摩耶夫人像が安置されています。
神戸市灘区摩耶山町2-2 ☎078-802-2211
●本尊 十一面観世音菩薩 仏母摩耶夫人尊●開基 法道仙人
-----------------------------------------------------------------------
法話
理想の人 天上寺貫主 伊藤浄厳
お釈迦様は、理想の人間像について、次のごとく説かれています。
恥を知り、常に清きを求め執らわれなく、つつしみ深く、真理を正しく見て清く生きる人は、生活しがたい。(法句経)
ここに言う「恥を知れ」とは、自己を深く内省して、己のいたらなさを悔いて恥じることです。
「常に清きを求め」とは、私たちの心身の働きである身体的活動、言語活動、精神活動のすべてが常に清らかであるように、努力を怠らないことです。
「執らわれなく」とは、己が中心と考える我執を捨て去ることです。
「つつしみ深く」とは、己を卑下することではなく、あらゆる点で己の行為を慎むことです。
すなわち自らを驕らず人を侮らないことであります。
また「真理を正しく見てきよく生きる人(正見者)とは、真理を正しく認識して、先に述べた心身の清らかな働きを実践して怠らない人のことであります。
具体的には次に示す十善を守り実践する人のことです。
①生きるものを殺すなかれ
②盗むなかれ
③男女の道を乱すなかれ
④いつわりをいうなかれ
⑤ざれごとをいうなかれ
⑥悪口を言うなかれ
⑦二枚舌を使う事なかれ
⑧貪るなかれ
⑨怒るなかれ
⑩間違った考えを持つ事なかれ
の十戒(十善戒)です。
ここに、仏教の理想とする人間像がいかんなく示されています。
なお「生活しがたい」とは、世に正見者として生きることはむずかしいということです。だが、その裏には「恥知らず」で、「清きを求めず」、「我執が強く」、「己を誇り」、「真理を見ず」に、十善を破っている人たちを戒めておられるのです。以上のごとくお釈迦様の説かれた理想の人とは決して、仏教徒だけに限られるのではなくすべての人々に通ずる教えなのです。
<参考引用掲載>新西国霊場法話巡礼 朱鷺書房