西国薬師巡礼<第43番 朝日山 神蔵寺> |
あさひやま あかねさしいずる かげをいて
だいひのちかい ひろきみちしば
天正三年(1575)年明智光秀が丹波へ入国の際、この寺を焼きました。しかし本尊の薬師如来は難を逃れ、その後承応二年(1653)願西が本堂、阿弥陀堂、鐘楼などを建立、天台宗から浄土宗にかわりました。今の本堂はその時のものです。
京都府亀岡市ひえ田野町佐伯岩谷ノ内院ノ芝60
●本尊 薬師如来●開山 伝教大師最澄
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法話
浄瑠璃世界の私を観よ 神蔵寺住職 松本泰山
人の心は少しの間もとどまることなく移ろいゆき、人の世は刻一刻と進み行くものです。
毎日の仕事を追いつ追われつする日々の中で、今のこのことをどうしよう・・・・と思う。その心に周囲からは、ああすれば、こうすれば、とたくさんの情報が飛び込んでくる時代であります。
その結果、かえって迷い悩みがますます出てくることになります。
決断と実行を先んじる人が、他人を動かし世間を動かして行くのは世の常であります。
千二百年の歴史を秘めた、ここ神蔵寺のお山は、ひっそりと今も東方を望み続けるお寺であります。
伝教大師自作と伝えられるご本尊のお薬師さんは、幾多の戦乱と和平の世を、堂宇の盛衰とともにご覧になってこられました。まさに「夢中の事の如し」でありましょう。
仏さまに合掌し礼拝する時、それは、私自身が、今こうしてここにあることに深い感謝と喜びを味合わせていただく時なのです。
父を重い母を思い、兄弟姉妹を、はたまた我が子や恋しい人を思いしながら、お薬師さまの前に立ったとき、
「ああ、何もかもが、お薬師さまのふところの中であったか」
と目覚めさせていただけるのであります。静かで大いなる朝日山のふところに抱かれ、大師の大慈大悲を受け止めてください。
合掌
<参考引用掲載> 西国四十九薬師巡礼 朱鷺書房