【四天王寺】 竜宮城から流れる亀井の水 |
中心伽藍の中にも龍が棲むという”龍の井戸”伝説がありますが、中央伽藍の東側の”亀井堂”にも伝説があります。亀井堂は回向を済ませた経木を流すところで、亀の形をした水盤があってその口から水が流れています。この水が”亀井の水”という霊水です。
江戸時代、狂言師の中川喜雲が書いた「京童跡追い」という本には「亀井堂の水は天竺から龍の棲む竜宮城を経て銀の樋で運ばれているから決してかれることがない」と記され、また伝承でも「金堂の地下深くに青龍の棲む深い池があってそこから流れている」と伝えています。これも龍の井戸と同様、四天王寺は荒陵池を埋めて建てたという伝承から発生したものでしょうが、昔の人は”亀井の霊水”の彼方に極楽があり、回向を済ませた経木を流せば極楽往生が叶うと考えていたようです。いったん底に沈んだ経木が浮かんでくるのを見て[これでご先祖の霊が浮かばれた」と安心されたそうです。
☆ 平安時代、亀井堂に参詣した西行法師は
あさからぬ ちぎりのほどぞ くまれぬる
亀井の水に 影うつしつつ
☆ 藤原の道真の娘中宮彰子は
にごりなき 亀井の水を 結びあげて
心の塵を すすぎつるかな
と詠んでいます。
聖徳太子「楊枝の御影」の逸話にはつづきがあります。[聖徳太子が立ち去ろうとすると井戸から尊い声がした。見ると水面に不動明王のお姿がある。感激した太子は不動尊を石に刻んで安置された。」という。これが亀井不動の由来で本尊は不動明王です。
大勢の方が水をかけてお祈りされているのでしょう。緑の苔で覆われています。
掌に乗る大きさですが迫力満点で魔障を屈服させるという憤怒の形相で座っておられます。
参考引用掲載 大阪を歩く
写真 ro-shin