近江湖東 <第13番 菩提樹山 昌善寺> |
ご本尊阿弥陀如来
包容力に満ちた定朝様式の典型で平安時代の作です。
法話 昌善寺住職 久米慶勝
あなたも四人の妻を持っている
『雑阿含経』に四人の妻という教えが説かれています。
インドのある国に、金持ちの男がいて四人の妻を持っていました。一号さんは大変美人で、男は彼女の言う事をすべて聞き入れ、最もかわいがっていました。二号さんは苦労して人と争ってまで得た美人で、一号と変わりないほど大事にしていました。三号さんは時々訪ねて愛し、慰めあったり気ままを言い合ったりしている仲です。四号さんは使用人と同じで夫の命令のままに立ち働き、一度も愛される事はありませんでした。
しかし、いかに金持ちといえども寿命はつきます。男は死が近づいたとき死出の旅はたった一人で行かなければならない事に気づき、とたんに寂しくてたまらなくなりました。そこで四人の妻に旅を共にしてくれるよう頼んだのです。
一号さんは「そんな馬鹿な話はお断り!」と怒りをあらわにして立ち去りました。二号さんはあなたが私を手に入れるために苦労したと言うが、それはあなたがかってにした事で、わたしはあなたのもとに望んできたのではありません。お断りです。」三号さんは「それはお気の毒です。せめて火葬場まで送りましょう。」四号さんだけが「妻として生活をまかなってもらったご恩があります。いいですよ。私がついて行ってあげましょう。」
この一号さんはこの肉体を喩えているのです。元気な時は一番大切にしていますが死出の旅にはついて行きません。二号さんは財宝を。争ってまで手に入れた財産も死ぬ時には置いていかなくてはなりません。三号さんは妻子縁者を表しています。死別を泣き悲しんで火葬場までは送ってくれますが納骨してしまえば、やがて悲しさも忘れ生きていくことに没頭するのです。ついて行きますと言った四号さんは、人間の心を言うのです。生きている間は、まったく心安らかなときは少ないのですが、しかし、この心が極楽浄土に往生(往き生まれる)するのです。
四人の妻の教えは、このことに一刻もはやく気づき、もっと心の栄養を取りなさいと教えるのです。すなわち、正しい信仰によって心をしっかり栄えさせる事が大事なのです。
滋賀県東近江市南菩提寺町 680
参考引用掲載 近江湖東二十七名刹巡礼
写真 ro-shin