この寺は平安初期の延暦十年(791)建部社の神宮寺として建てられ比叡山延暦寺一乗止観院に属し大願寺と称していました。中興の祖は源平の合戦のときの「扇の的」で有名な源氏の武士那須与一宗高の二男である願名坊宗信です。那須与一は東国下野国から近江の国に封ぜられ石畑建部領主となり発願して建てたのがこの寺です。正元元年(1259)2月7日のことでした。
那須与一には七人の子供がありそれぞれ一寺を建て寺名をすべて弘誓寺(ぐせいじ)と号しました。これを那須の七弘誓寺といいます。この寺だけが浄土宗で住職の姓も稲岡姓ですが、他の六ヶ寺はすべて浄土真宗で住職はみな、那須姓を名乗っています。
八日市の瓜生野(西本願寺)・五ヶ荘金堂(大谷 東本願寺)・能登川の躰光寺(西本願寺)・湖東町小田刈(西本願寺)・湖東町中一色(東本願寺)・南川瀬の法蔵寺(西本願寺)です。
この寺だけが浄土宗であるのは、織田信長によって焼かれたとき、この寺に浄土宗の宗祖法然上人の「南無阿弥陀仏」の六字名号の御親筆が焼け残ったため、安土城築城の際、法然上人御親筆の縁によりこの寺も再建される事になりその時に浄土宗に転宗されたものと言われています。
信長は天下統一のために凄まじい寺々を焼きつくしたが、一方では菩提寺として安土に浄厳院という寺を建立し、その四天王として当寺に篤く帰依し手厚く保護しました。
滋賀県東近江市建部下野町282 ☎0748-22-0644
参考引用掲載 近江湖東二十七古刹巡礼
写真 ro-shin