ぽっくり往生の寺

生きとし生けるものすべてが、避ける事のできない死。どうしても避けて通れないなら少しでも安らかに、他人に迷惑をかけないように死を迎え、み仏の浄土に安楽往生したいと願うのは当然の事でしょう。
これが「ポッックリ信仰」です。吉田寺は斑鳩の里法隆寺と、万葉の古歌で有名な紅葉の名所竜田川との中間にあります。奈良県下有数の多宝塔(重文)は、寛正四年(1463)に建立されたもので、恵心僧都源信の父、卜部正親公の菩提追善の大日如来像が安置されています。

孝行心の厚かった憎都は、生母の臨終に際して魔除けの祈願をした服を着せてあげると、母はまったく苦しまずに、称名念仏のなか極楽往生しました。そのとき母は、「後の人々も心身の苦しみなく念仏往生できるように、その目標になる立派なみ仏を作ってくれるように」遺言したそうです。
そこで僧都は、生母の三回忌追善と末世衆生の利益のために、清水の森に生えていた栗の大樹を伐って、一刀三礼(仏像を刻むのに一刀を入れるごとに三度礼拝すること)の仏像を刻みました。それが吉田寺の本尊。大和最大の阿弥陀如来像(重文)です。

ぽっくり祈願のご祈祷は毎日されていますが、とくに、毎月10日の念仏会にはたくさんの参拝者が本堂に集まり木魚を叩いて祈祷する姿には圧倒されます。「みんな、ぽっくり往生したいんだなあ」とつくづく思いました。ぽっくり祈願の時は、持参した肌着に祈祷を受けます。この肌着を身につけると健康に延命長寿を保ち、安楽に極楽往生できると言われ信仰をあつめています。
奈良県生駒郡斑鳩町大字小吉田1-1-23 ☎0745-4-2651
参考引用掲載 関西御利益の寺社
写真 ro-shin